お正月に食べるものとして知られているおせちは、御節料理とも呼ばれるように、「御節供」や「節会」を略したもので、古代中国から伝った五節供の行事に由来しています。ちなみに、奈良時代に行われていた節会で供されていた節供は、高く盛ったご飯などのシンプルな内容だったと考えられています。この様に朝廷で行われていた五節供の行事を庶民が行うようになり、江戸時代の武家作法が中心となり正月料理が形成されることになります。さらに、第二次大戦後にデパートなどが見栄えの良い重箱入りのおせちを販売したことにより、重箱に御節を詰めるという現在のスタイルが確立することになりますなお、現在のスタンダードとされているおせちは、祝い肴三種、焼き物、酢の物、煮しめという構成が基本です。
一つひとつの料理は、火を使う煮炊きを出来るだけ避けるべきという風習に基づき、酢に漬けたり干したりするなど日持ちするように工夫を施していることが特徴です。ちなみに、三つ肴の内容は地方により異なっており、関東では黒豆、数の子、ごまめの種類なのに対して、関西ではごまめの代わりにたたきごぼうが使われています。また、現在ではこの様な形式にとらわれることなく、西洋料理や中華料理などを重箱に詰めるおせちも登場しており、百貨店や料亭などが宅配サービスとして提供しています。これは、食品の保存技術が進んだということと、多様化した嗜好に対応するためですが、正月には女性を家事から解放するという理念を最重視した結果でもあります。